よくおどろかれるのですが、私は今だに携帯電話を持っていません。
自分の時間をブツギリにされるのもがとても嫌、ということも大きいですが、
電話が嫌い、というよりはむしろ怖いからです。
今でも家の電話が鳴ると飛び上がってしまいます。
電話をかけるのも本当は嫌なのです。
そんな私が某研ゼミの電話オペレーターのアルバイトを大学―大学院の4年半、
やりました。大学院の途中に就職をしたので、それまでずっとやっていました。
自分が電話をするのも怖いくらいなので、そんな怖さを乗り越えてまで、
わざわざ電話をしてくださるお客様というのは、本当にありがたいな、
とこころから思っていました。
だからでしょうか、「注文した教材が届かない!」というクレーム電話を受けた場合でも、
お客さんが感情的に怒ってしまったことというのはほとんどありません。
アルバイトを始めたばかりのときに、パソコンの操作などが分からずに、
もたもたしていて、おまたせしてしまい、怒らせてしまったことはありますが、
そのくらいです。
私どもの教材がよい、と思って、せっかく注文してくださったのに、それが届かない、
こんな申し訳ないことはない、と心底思うのです。
そして、もしかしたら電話をするのが嫌いな人なのかもしれないのに、わざわざ電話してくださっている、と思うと、自然に心から「申し訳ありません」という言葉が出てくるのです。
このアルバイトを続けていくうちに、単なる受注の電話よりも、
むしろクレーム電話のほうがやりがいを感じるようになりました。
お客様が何にたいしてお怒りなのか、その怒りというのは、どこからくるのかを考えれば、
マニュアル対応に魂がこもります。
自分ではどうにもならなくて、上長対応というケースはそんなにはありませんでした。
さらにスキルアップしていくと電話をするまでは、どんなにお怒りのお客様でも、
「はい、某研ゼミです!」という最初のコールでお客様の心を溶かせる自信がありました。
「お電話してくださって、ありがとうございます。」という気持ちで、魂をこめて言うのです。
そして必ずワン・コールで取る。
電話を取る前の一瞬で心を落ち着かせ、にっこりわらってみる、
それだけで電話の声って違ってきます。
心理学の研究でも声というのは、ごまかしが聞かないといわれています。
顔の表情であれば、表情筋を無理に動かすことでごまかせます。
アメリカでの研究で、アルコール依存症の治療成績が上がらないカウンセラーは
声に敵意がこもっていた、ということが分かっています。
「あなたのことが心配ですよ」と口では言っても、本心では
「自分で好き勝手に酒を飲んで、こうなったんだから、自業自得だろう」
と思っていると、そこが伝わっていくのです。
電話の場合には、本心からそう思っていないと、だめなのです。
声には敵意がこもっていると、それが伝わってしまいます。
めんどくさいな〜、早く切りたいな〜、と思ってあいづちを打っていると、絶対に分かります。
ときどき学校で先生方と保護者の方との電話を聞いていると、
ほんのちょっとだけ気を配れば、トラブルにならなかったのにな〜、
と残念に思うこともあります。

